アジア投資家の資金が不動産資産に殺到

ポーラ・トンプソン

過剰流動性:この一言でアジアの不動産投資家の現状を説明できます。機関投資家、政府系ファンドおよび国内事業にとって、際限のない余剰資金がお決まりとなっています。当然、このような巨額の資金が利用されないまま放置されるはずがなく、「働いてもらう」必要があります。

著者はかつて、英国の不動産投資についてソブリン債と利回りの間のスプレッドの拡大の継続を考察しましたが、この点においてアジアも全く変わりはありません。ますます多くのアジアの投資家が、手持ち資金の価値を上昇させるべく、不動産市場に関心を向けています。

例えば、昨年、世界最大の年金基金である日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、約156兆円(1.37兆米ドル)の資産全体の5%を上限として、インフラ事業、プライベート・エクイティおよび不動産等のオルタナティブ資産(代替資産)に投資すると発表し、650億米ドルという目を見張るような額の資金が新たにオルタナティブ資産市場に流入しました。Preqin社の最新の調査 によると、アジアを拠点とする不動産投資に積極的な投資家の数は2015年以降59%増加しているといいます。

昨年、英国市場では、ロンドンの不動産への投資のうち約32%を中国資金が占めていました(2012年における割合は約3.4%)。2017年の英国における最大規模の不動産取引事例のうち数件(具体的には、「トランシーバー(Walkie-Talkie)」や「チーズ下ろし器(Cheesegrater)」という愛称の超高層ビル)が、中国マネーによるものでした。より広範な視点でみると、2017年には合計で355億米ドルのアジア資本が欧州、中東およびアフリカに流入し、アジアの投資家は海外の商業用不動産に834億米ドル投資しています。

国内投資のトレンド

グローバル市場が今後もアジア投資家の関心を確実に集めるであろう一方で、目標リターンを達成するために多くの投資家が国内市場にも目を向けています。この背景には様々な要因があり、中国の国内資本流失規制も含まれます。中国には3.1兆米ドル超の外貨準備高があるため流動性は不足しておらず、加えて中国政府が資本流失に対して引き締め政策を行うことにより国内資本は既に逼迫している不動産市場に再度向かうという結果になりました。

Preqin社は、2013年以降のアジア地域を拠点とする運用会社により実施されたアジアのプライベート・エクイティ不動産(「PERE」)取引のおよそ5分の4が同地域の運用会社によるものでPreqin社の調査データは、2016年以降、アジアを拠点とする運用会社が、グローバルに展開する運用会社よりも、大規模なアジア地域の取引をまとめてきたことを示し、「恐らく、現地に関する知識や現地におけるネットワークによって、アジアを本拠地とする運用会社による大型不動産へのアクセスが可能になっている。」と述べています。

PwCの「2018 Emerging Trends in Real Estate不動産の新しい動向」において明らかにされたRCAのデータによると、アジア太平洋地域において、2017年は、年間取引残高の合計額が1,580億米ドルに達し、稼働中の不動産への投資では記録的な年でした。シンガポールの不動産投資は過去10年間で最も活発であり、香港では用地売却が78%増加し、214億米ドルという記録的な水準でした。その一方で日本は不動産投資が3%増加し、「現在の利回りと日本の超低水準のソブリン債価格との間の健全なスプレッドを背景とし、利回りを求める投資家の目的地として、その状況は強まっています。」

オルタナティブ不動産資産に対する関心の高まり

不動産投資における一般的な傾向の他に、世界の他の国々と共通しているのは、アジアにおける代替的な不動産関連資産の台頭です。 ジョーンズラングラサール(JLL)の最新の調査では、アジア太平洋地域のオルタナティブ不動産市場では、欧州や米国と比較すると未成熟ではあるものの、REIT、ファンドのエクイティ投資、運用会社、オペレーターおよびディベロッパーなど、ますます多くの投資家を引き付け始めているという事実が強調されています。

当該地域における人口増加等の要因により、教育施設、学生向け住宅およびトランクルームのような資産への需要が増加しています。JLLは、当該地域における特定のオルタナティブ不動産の資産クラスの利回りを4~7%と推計し、その一方でコア資産の利回りがそれよりもずっと低い水準にとどまるとみています。データセンターも、同様に重要な資産クラスであり、関心が着実に高まっています。つい先日オラクル社は、世界中で12のデータセンターを新たに開設すると発表しました。その半数はアジアに開設されます。

もちろん、その他資産が忘れられてしまうというわけではありません。昨年CBRE社は、特にシンガポールおよび香港で、リテール市場において「回復の兆し」を発表しました。その一方で、つい先日 Preqin社のデータにより、全体をまとめてみると、小売スペースおよびオフィススペースが、2013年以降のアジアのPERE取引フローの約半分を占めることが明らかになりました。その一方で、PwCは、「アジア太平洋全域の多くの都市における新たなオフィススペースへの需要の最大の牽引要因」に該当するコワーキングのオペレーターのオフィススペース、特に共有ワークプレイスに対する需要の着実な増加を報告しています。

2018年を通して、アジアの不動産投資におけるトレンドがどのように展開、発展し続けるのか楽しみです。明らかであると考えられるのは、国内外またはコア/オルタナティブの別にかかわらず、不動産はアジア人投資家のレーダーに主役としてしっかりと捉え続けられるだろうということです。

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